きらきら不動産(株式会社若林)
成約率を従来の3倍以上に。お部屋探しのお客様のみならず、オーナー様や仲介業者様の満足度まで上げるTHETA 360.biz活用のコツとは?
きらきら不動産様は東京都新宿区神楽坂を中心とした不動産会社です。自社保有物件の管理会社として2012年に設立され、賃貸管理・仲介業務・不動産販売を行ってきた同社は、現在は都内のみならず他県まで賃貸管理物件のエリアを展開し事業規模を拡大しています。
ポイントは管理物件の成約率を上げること。そのためにどんな工夫をしてきたのか。
今回は、きらきら不動産様の業務改革を推進してきた専務の若林 英司様にお話を伺いました。
THETA、THETA 360.bizとの出会い
まず若林様がRICOH THETA(以降 THETA)を知ったきっかけについて教えていただけますでしょうか。
前職では12,000戸の賃貸物件の管理責任者をしており、そこでの管理のバリューアップを目的としてひとつの会社を立ち上げました。その時からリコー様とは取引をしていたのですが、その中で2013年にTHETAの初号機を紹介されました。
当時は、人気物件は物件を見ないで決める(未内見契約)というのが主流になってきていました。ただし写真の画像や募集図面だけでは、例えば部屋にあらかじめ照明が備え付けられているのかどうかなど、オーナー様も管理者の方も確認できない。それが360°の写真で記録することでカバーできることに着目しました。主にメンテナンスの確認用途として360°カメラが使えると思い、2014年からTHETAを使用し始めました。既存の入居者様、オーナー様、お部屋探しの方、仲介業者様の4社すべてに対して360°写真で部屋の内容を伝えることで非常にわかりやすく説明できると思いました。
そこからTHETA 360.bizの導入を決めた背景についてもお聞かせいただけますでしょうか。
360°の写真を間取り図に埋め込むにはクラウドのデータ量が膨大になってしまうので、そこは「餅は餅屋」ということで、THETA 360.bizが適切だと思いました。現在では公開ツアー数が3,000件を超えて、パノラマ画像の保有数は40万枚を超えています。
集客率を高める工夫
THETAでの撮影、並びにそのパノラマ画像を公開する際にはどのようなことに気をつけているのでしょうか。
やはりメンテナンスに関わるところが重要です。ガスコンロの配管がどのように繋がっているのか、IHの場合だとどこに電源が来ているのか上を見たり下を見たりしたい。その点も踏まえて、オーナー様には内装前の写真と内装後の写真を送るようにしています。
お部屋を探す方の目線から考えると、昼と夜でどのように部屋の雰囲気が変化するのかを確認したいもの。昼と夜で同じ場所を撮影して、その映像をワンクリックで切り替えられるようにしています。さらなる工夫として、すべての収納スペースやカーテンのサイズなども、ワンクリックで表示できるようアノテーション(注釈)機能を使って実測データを記載しています。これらを保有している40万枚のデータすべてに実施しています。
<THETA 360.bizを使って作成したバーチャルツアー>
わざわざここまでの労力をかけてデータの精度を高める理由はなんでしょうか。
企業としての一番の目標は、利益を出すこと。そのためには人件費のコストを抑えることが最も大事です。このデータを作ることでお部屋探しをしている方のみならず、仲介業者様とも簡単にコストをかけずにお部屋の中身を伝えることができるようになりました。
コロナ禍の前、2000年初頭から物件を見ないで決めることが主流になってきました。特に大学入学のための物件など、単身者用の分譲マンションやアパートの間取りはほぼどこも同じような作りをしています。物件を見ないでスピーディーに決めるために、360°の精度の高い写真が必要。コロナ禍になり、ZoomやLINEを使用した内覧というのも増えてきたが、それでもお客様の時間に縛りが出てしまいます。弊社が作成した360°写真を見れば、お客様は見たい時間に見たいところを確認することができます。
お客様、オーナー様の反応の変化
THETA 360.bizを活用してお客様の反応はどのように変わったのでしょうか。
10件の問合せが入ったときに大体成約に至るのが1件程度で約1割というのが普通です。それが弊社の場合、成約率が3割~5割まで上がってきて年々上昇しています。1日に仲介業者に物件を見せられる件数は営業マン1人あたり1日3~4件、月で40部屋、多くの不動産屋では会社全体で月100部屋くらいの紹介が限界。それがTHETA 360.bizを活用することで、その縛りも取り払うことができます。
お部屋探しの方はどうやってきらきら不動産様のページにたどり着くのですか。
ポータル経由での場合、いきなり弊社に問合せがあるわけではありません。沿線・間取り・賃料・設備を入力すると3~4件が引っ掛かり、その中の一つにきらきら不動産があります。そこにはちゃんとどんなデータ、内容が見られるかが明記されているので、物件に興味を持ってくれたお客様が閲覧してくれます。
オーナー様、仲介業者様の反応はどうでしょうか。
一番重要なところはオーナー様から預かった物件に早く入居していただくこと。オーナー様は投資をしていて、すぐに家賃が入るようにするためには不動産会社が物件を紹介しないと始まらない。ただし、その件数が増えれば増えるほど物件が埋もれてしまいます。その埋もれそうな物件を拾い上げてエースにするために弊社がわかりやすい紹介ページを作成して、お手伝いをしているということです。そういった物件が成約していくことでオーナー様、仲介業者様の信頼を得ることができていると思います。
精度の高い物件データを多数作成するまでに苦労した点はありますか。
撮影ポイントの工夫がまず大変でした。部屋の中心だけでなく、部屋の端でお客様が確認したいポイントを撮ることが重要。オーナー様、仲介業者様、お部屋を探している方、そして弊社が一つの作品を作っているというイメージです。このバーチャルツアーを確認して入られたお客様は入居時に綺麗に家具などを配置して入られるパターンが多いです。
今後に向けて
今後、御社としてはどんなところを目指していきたいですか。
大手の企業では出来ないことをやっていきたいです。大手の企業ではコアな人材はいるが、募集は募集、管理は管理、修理は修理、経理は経理と分業されています。それだとオーナー様は誰に連絡をしていいかわからない。うちの会社はその枠組みをなくし、全員が全員ある程度のことができるようになり、すべてをワンストップでできるようにしていきたいと考えています。そのためにはよりオートマチックにシステム化をすることが大事です。
具体的に物件をよりよく見せるための課題はありますか。
360°画像に動画を埋め込みたいです。例えばテラスやバルコニーに移動したらいきなり動画に切り替わるなど。どのくらいの交通量なのか、どのくらいの騒音なのか。現状では設備、間取り、立地についてはクリアしているが音の部分がクリアできていない。特に子育て世代では音の感覚が気になるところなので、そこに手を入れていきたいです。
もう一つ、個人的に興味があるのはメタバースです。10~20年後は東京に住みたい、東京に会社を置きたいという方は減るのではないかと予測しています。分散化されていき、電動キックボードやドローンなどは電柱が少ない地方部から発展してくると思っています。そこでお部屋探しの形も、メタバースを利用して、現地に直接行った気になりVRでお部屋探しをする世の中になるのではないかと思います。
弊社ではそういう新しいIT技術をどんどん取り入れていきたい。さらに言えば自分たちで「技術開発」まで行い、よりお客様がわかりやすくなるような、伝える技術を高めていきたいと思っています。