高津川森林組合
「現地へ行かずに境界確認」高齢化問題に直面する事業の大改革
高津川森林組合様は、島根県にある一級河川「高津川」周辺の森林整備、木材の搬出、地籍(土地の戸籍)調査等の事業を行っています。
土地に関する情報は、登記簿と地図によって表されていますが、これらの記録はいまだに明治初期の地租改正事業の記録を基礎としたもので、面積が正確でなく、土地にかかわる多くの行政活動や経済活動に支障、無駄が生じています。
これまでは現地調査を行い、正確な境界確認を行ってきましたが、不在地主の方や山の所有者の高齢化により急峻な山林を歩いて調査する事へのリスクが非常に高まってきました。
THETA 360.Bizを活用して、現地へ行かずに境界確認を行うという改革を実施した、地籍課 課長の永嶺様にお話を伺いました。
THETA 360.Biz導入前の課題について
高津川森林組合様が、THETA 360.Bizを導入する前の課題を教えていただけますか。
山の境界を調査する事は我々にとって至上命題でした。誤って他人の所有している木を切ってしまうなどのトラブルを防止する意味でも、我々が行っているすべての事業において境界が確定していることが前提条件です。しかし、境界を知っているのは森林所有者や林業関係者等の一部の人に限定されており、誰でもわかりやすく確認できるよう「デジタル化」することが課題となっていました。
ところが境界を知っている人の高齢化により、現地での正確な調査ができずに困っていたのです。はじめは写真や地図を使って調査をしていましたが、どうしてもイメージが伝わりにくく、それを解決する手段を摸索した結果THETA 360.Bizにたどりつきました。
これまでの写真・図面の説明ではどういうところがわかりづらかったのでしょうか。
図面の見方に慣れていない人に境界の説明をすることは、思っていた以上に難しいと感じました。また、通常の写真では山の中は同じ景色に見えてしまい、境界を決めるツールとしては決め手に欠けます。それが360度の映像になると、尾根や谷の位置を確認出来たり、境界石や植林、お地蔵様などの目印を基準にすることで、その場所のイメージが非常に伝わりやすくなるのです。
【これまでの境界確認の様子】
THETA 360.bizを使い始めたきっかけ、背景
THETA 360.bizを使い始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
現地へ行かずに境界の確認、調査をできるツールを探していました。ドローンでは飛行時間に限りがあり撮影範囲をカバーできません。レーザー測量なども検討してみましたが、こちらは少なくとも数百万円以上の費用がかかり、コスト面から実現には至りませんでした。そんな中、リコー代理店の営業の方に相談をしたところ「THETAを使ったらできるのでは?」とアイデアをいただきました。
THETA 360.bizの導入にあたって懸念事項はありませんでしたか?
THETA 360.bizはこちらが求めていた機能として、まさにドンピシャリだったので即導入を検討しました。コスト面での懸念がありましたが、本体、サービスとも思っていたより安くて問題はありませんでした。
ひとつ懸念があるとすれば、屋外での使用という点です。これまでのTHETA 360.bizの事例は屋内(内装)での利用が想定されているイメージだったからです。ただ、他に代案もなかったので「とにかくやってみるしかない」の精神でスタートしました。チャレンジにあたっては初期コストがかからないことも大きく作用し、心配された導入時にはリコーの営業の方にオンラインで面談しサポートしてもらいました。
屋外での撮影にあたって、どのような点に気をつけていますか?
事前に撮影場所の目星をつけておくことが大事です。植林開始の年度差の関係から、木の種類や大きさが違うところが境界になる可能性が高いです。これまでに蓄積している事前情報と合わせて、目印になるものを選定しておく必要もあります。
また、撮影時にはタイムシフト機能* を使用しています。比較的平らな開けた場所に三脚を立てて撮影を行うので、隠れる場所がなくても人の写りこみが無い写真が撮れるこの機能は重宝しています。
* RICOH THETA SC2 for Businessに搭載されている撮影機能
THETA 360.bizで期待した効果とその反響
THETA 360.bizの導入で期待していた効果、実際の反響はいかがでしたか?
現地へ行かずに境界を確認できた事で森林所有者の負担を軽減する事ができ、業務の効率化とコストダウンが実現できました。森林所有者は遠方の都会にいることもあったりして、久しぶりに見た山の景色に感動した人もいました。
境界を確認する方は森林所有者がメインではありますが、それ以外にも建設会社との打合せや、仕事を依頼してきた行政担当者との協議でも活用しています。自然エネルギー関連のプロジェクトがあったのですが、その際も森林の360度映像を活用しオンライン会議で現地へ行かずに様々な課題を共有する事ができました。
360度映像を活用してくれる人は、広い意味で高津川周辺の森林・山に関する情報が欲しい人全てです。客観的資料としてこれらの映像情報は非常に役に立つものだと思っています。
<THETA 360.bizで作成した境界確認マップ>
今後の展開について
今後の高津川森林組合様の展開についてお聞かせください。
「現地へ行かずに境界確認」のさらなる拡大が第一。それ以外にも360度映像をお客様や組合内での打合せにどんどん活用したいです。さらに、ホームページでもふるさと高津川流域の景色を360度の映像を紹介していこうと思っています。
また、今後は高津川エリアの道案内も兼ねて、森のバーチャルツアーや360度動画の制作にもチャレンジする予定です。
教育、福祉、求人などへの活用もできたら素敵だなと考えています。
今後のTHETAのソリューションに期待することはありますか?
360度画像の中に線やテキストの書き込みがしたいです。それこそ、境界の確認がさらに便利になるはずです。
また、将来的には測量にも活用できたらなと思っています。木々の間隔、幹の太さや高さなどより細かい分析ができるとありがたいです。
貴重なお話をいただきどうもありがとうございました。